研究概要 |
固体面上における液滴の移動などに見られるような「濡れ」の問題は,部分的濡れを有するありとあらゆる系に見られるものである.微小重力環境下においては重力の影響がほぼ無視できるため,地上において重力駆動による液体移動時にはほぼ見られなかった,固液気3相境界線(コンタクトライン)近傍流体の動力学に起因する影響が顕著化する.すわなち,所謂「濡れ性」と呼ばれる性質が重要となるわけであるが,この性質は界面近傍の分子レベルからなるミクロな現象が,液滴全体の形状や運動といったマクロ的な挙動に影響を与えるというメゾスコピックな現象であると言える.本研究グループでは,このようなメゾスコピックな熱流体力学に関する知見を蓄積すると共に,宇宙環境における部分的な濡れを有する系を利用した応用技術の高効率化,また部分的濡れを有する系の環境制御可能化を目指して研究を行っている.本研究では実験および分子動力学を用いた数値計算から当該現象にアプローチを行った. 実験的研究においては,高精度干渉計を用いた,固体面上を移動する液滴前縁コンタクトライン近傍流体のプロファイル再構築,および液滴前方に存在する先行薄膜の存在領域の計測,コンタクトラインの移動に対する固体面上微粒子の影響に関して実験を行った.また,位相シフト技術の導入により干渉計の高精度化を行った. 分子動力学法を用いた数値計算では,固体面上を移動するナノスケール液滴に関する動力学として,レナード・ジョーンズ流体に関して移動するナノ液滴に対するナノスケール粗さの影響について解析を行った.また,来年度以降の計算実施に向けて,カーボン-アルコール系に関するポテンシャル構築およびコード開発を行った.
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