水素吸蔵物質として注目されている単層カーボンナノチューブの合成には、化学的気相合成法を用いることが最も有効な手法の一つと考えられているが、この合成法によるチューブには欠陥が多い。本研究では、この合成反応場に、高い熱的、結果的には化学的非平衡性を有する高周波交流(RF)放電プラズマを用い、さらにはパルス変調を施すことによって、プラズマの生成・消滅時の過渡現象を積極的に反応に利用する方法を導入した。これにより、欠陥の少ない高水素吸蔵性カーボンナノチューブの大量合成が期待できる。1年目の研究においては、実験装置の構築を行い、原料ガスとして用いたアセチレンと水素の混合ガス中における容量結合型パルス変調RF放電の特性、特にヘリウムを原料ガス中に多量(97%)に混合した場合の特性を調査し、カーボンナノチューブ合成に向けた有効性について検討を行った。 ヘリウムを多量に原料ガス中に混合することで、放電特性は全圧の影響を受けにくくなり、高い全圧(高い原料ガス分圧)でも放電が発生・維持できるプラズマ状態が実現された。この時、ほぼ線形的な電流-電圧特性が得られ、安定した放電の形成や、放電の制御性が良くなることが明らかになった。そして、パルス変調を施す効果によって、全圧と放電の持続・休止期間のバランスにより、放電の発生・維持の特性に影響を与えることが明らかになった。この結果は、荷電粒子の発生と損失の時定数により決定されていると予測され、パルス周波数、パルスデューティー比の適切な設定により、反応空間中に存在する荷電粒子やこの存在に起因するラジカルの種類や量を、制御することが可能であることを示唆するものである。 また、本研究における放電プラズマ発生技術は、光触媒充填層方式を用いた大気圧放電によるオゾン生成にも用いられ、酸素原料から高効率・高濃度でのオゾン生成を可能にした。
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