研究概要 |
稼働中の機械あるいは構造物に作用する動的荷重の高精度推定手法を提案するために研究を行い,本年度は以下の実績を得た. 1.動的荷重の推定理論の構築と数値例による検証 A.境界要素法を援用した推定理論 境界要素法による順問題解析では境界上での変数の値のみで定式化が可能であるが,逆問題解析の場合は,領域内部の変数の値も未知数にした定式化が必要である.そのような定式化を新たに行い,はり構造物の逆問題解析の精度について検討した. B.運動方程式に基づく推定理論 本手法は既に回転機械などを対象として提案されているが,対象物の物性値が比較的均等に分布した系では,精度の良い結果が得られないことがわかった.そこで少数の変位測定データから全自由度の変位を推定する際に,物理的考察に基づいた拘束を導入する手法を提案し,適用性を検討した.その結果,提案した手法は,荷重の作用位置の情報がある場合には有効であることがわかった. 2.実験装置の製作と検証 A.設計と製作 当初の計画では実験装置は次年度に製作する予定であったが,数値解析を行う際に具体的なデータが必要であるので前倒しで実施した.一様均質な鋼製のはりの両端をスプリングバネで支持する装置を考え,初めに現有の計測装置等の性能から実験の仕様を策定した.その後,具体的な設計を行い,実際に製作した. B.装置の性能検証 実験装置を数学的にモデル化した場合の動的挙動と実際の動的挙動を比較・検討し,実験装置の調整,解析モデルの調整を行った.ある程度の一致を見たので,実験で得られたデータを利用して数値解析を行った.その結果,比較的薄いはりの場合には,精度の良い結果を得ることができた.
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