研究概要 |
平成16年度までに実施した研究から,磁気軸受で支持した回転体は,磁気軸受のコントローラのゲインを変化させると,ある価から急激に安定余裕が小さくなり,不安定振動発生に近づくことが数値解析で判明している. しかし,この数値シミュレーションでは,回転体の軸内部減衰を考慮していない.一般に,軸の内部減衰は回転体の不安定振動を増長させると言われている.平成17年度に開発した磁気軸受支持ロータの安定余裕を評価する解析ソフトウエアでは,軸スリーブの焼き嵌めによる軸内減衰を構造剛性に比例するとして,これを考慮した解析ソフトウエアを開発した. プログラム開発と並行して,12000rpmまで回転できる小型磁気軸受-ロータ試験装置を製作した.この小型磁気軸受-ロータ系の制御器のパラメータ(PID制御の比例ゲインと微分ゲイン)を変更して,ロータを安定領域から徐々に不安定領域に近づけて,そのときの安定余裕指標(感度関数,ゲイン余裕,位相余裕)をサーボアナライザーを用いて測定した.このシステムは多入力多出力系(MIMO)であるので,この測定データから,MIMO系の感度関数行列の最大特異値を求めた,また,これらの評価量を統一的に比較するため,安定余裕距離をそれぞれの評価量に関して定義した.その後,ISOで規定することになったシステムの安定性に何ら不安を抱かせない領域(ゾーンA),安心して長期連続運転可能領域(ゾーンB),時期を見計らって点検の必要を感じる領域(ゾーンC),危険領域(ゾーンD)に対する本実験ロータの安定余裕を定量的に評価した.
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