研究概要 |
人工心臓用のアクチュエータとして、セルフベアリングモータの適用が提案されている。人工心臓として用いるセルフベアリングモータは、高効率で低エネルギー消費、低発熱であるとともに、コギングトルクを抑え安定な浮上制御を実現できるように、ギャップ磁束分布がより正弦波に近くなるような永久磁石の配置が望ましい。また,セルフベアリングモータは,能動制御型のシステムであり、フィードバック制御のためのセンサを必要とするが、より小型化のためにセルフセンシング制御の実現が望まれている。通常のIPMモータは、主磁極方向であるd軸方向の磁束は通りにくいが,これと直行するq軸方向は磁束が通りやすいというインダクダンス変動があるため,セルフセンシングがうまく出来ないという問題があり,この問題の解決は,IPMモータの低コギング、低トルクリップル化という観点からも重要な構造である。 本年度は,IPM型セルフベアリングモータに用いるIPMロータの,永久磁石配置とその時の磁束分布パターンについて,磁気回路を集中定数化した磁気等価回路と,有限要素法を用いた磁場解析を行い,d軸とq軸のインダクタンス差の少ないセルフセンシング可能なロータ構造と永久磁石の配置について検討した。その結果,d軸方向の内部永久磁石の直列磁気抵抗以上の磁気抵抗をq軸方向の磁気回路に付加することで,ロータの回転に影響されない,ほぼ等価な構造が得られることがわかった。 さらに,実際に試作したIPM磁極構成を持つ薄型セルフベアリングモータは,7%程度のインダクタンス変動があるが,よく類似した変位推定特性を示しており,ほぼ等価な構造が実現できていることを確認した。また,この差動出力の理論式を導出し,変位推定特性について考察を加えた。その結果,回転電流のみの場合は,比較的良好な特性が得られるが,浮上制御を行う場合には何らかの非線形制御が必要なことを理論的に説明した。
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