研究概要 |
消化管の手術後に行う導通試験の時間短縮のため、慣性反力走行による滑らかな外表面をもつ走行カプセルを提案し、基礎実験と理論解析を行った。今年度は生体への影響を考慮して駆動に伴うカプセルの温度上昇を測定するとともに、理論解析の結果を用いて走行速度を向上させる入力波形を提案し、走行実験によって効果を確認した。 走行カプセルの構造と走行原理 直径7mm,長さ12mmのカプセル本体に固定したコイルに交流電流を流し、コイル内の永久磁石(質量)が移動する際の慣性反力、壁面への衝突の衝撃力、走行面とカプセル間の摩擦力との組み合わせで走行させた。 カプセル表面温度の測定 様々なサイズ、材質のカプセルを製作し、駆動中の表面温度を測定した。カプセル外殻の材質としては、アルミニウム、アクリル、ゴムを用いた。一定時間駆動後、放熱と発熱がほぼ均衡する傾向がみられたため、駆動時間3分までのカプセル表面温度を、非接触温度計を用いて測定、比較した。いずれも生体に影響を及ぼす程の温度には上昇しなかった。直径の小さなカプセルに比べ、直径の大きなカプセルの方が消費電力が少なく温度上昇も少ない傾向がみられた。空間の多い、太めのカプセルは空気による断熱効果で表面温度が上昇しにくいと考えられる。 走行速度向上方法の検討 走行カプセルの速度向上のため、理論解析結果を基に入力波形の検討を行った。理論解析の結果、走行速度特性を示したグラフにおいて、摩擦力f_rに対する電磁力f_mの比fの値により移動方向が逆転することがわかった。一方、入力電圧-電磁力特性および上述の速度特性から、カプセル内永久磁石を順方向に移動させる際に絶対値の大きな電圧を加え、逆方向に移動させる際には絶対値の小さな電圧を加えれば、カプセル本体は常に同じ方向に移動し、単純な+-対称の波形の時より大きな速度が得られると推定できる。そこで、-側の電圧絶対値を小さくした波形を入力したところ、2倍近く走行速度の向上が見られた。 まとめ 消化管内走行用カプセルの駆動機構を提案し、理論解析と駆動実験を行った。カプセルを従来の半分以下の長さに小型化するとともに、表面温度上昇を防ぐには空気による断熱効果のある太めの形状が有利であることを見出した。理論解析結果を利用して入力波形を改良し、より速い走行速度を得ることができた。
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