研究概要 |
本研究では、人間行動におけるリスク事象を予測するため、人間の力学モデルをベースにした動作予測に確率論に基づく動作推論手法を融合したリスク予測手法を提案し、提案手法に基づく人間搭載型センサシステムを用いた転倒予測実験を行うことで、その有効性を実証することを目的としている。 平成17年度は、(1)人間の胴体、上肢、下肢の運動分析による運動予測法に関する検討、(2)物理的拘束のある状態での転倒リスクの評価法に関する検討の2つの課題について取り組んだ。まず、人間の動作解析システムとして磁気式マルチトラッキングシステムを購入し、人間の胴体、上肢、下肢の運動計測を行うシステムを構築した。このセンサシステムは有線で8つのセンサを持ち、それぞれの位置と回転角(x, y, z, pitch, roll, yaw)が検出できるものである。今年度はリスク事象として歩行器使用時における転倒を対象とし、転倒状態を予測するためにキーとなる情報として、歩行器後脚接地点と人間の足の接地点が作る4角形内における重心位置、重心位置の絶対速度、重心位置の移動方向の3つのセンサ信号パターンを取得することとした。具体的には、被験者の両足首部、両膝部、腰部、首部、両手首部の計8箇所に上記センサを取り付け、歩行器使用時における通常安定歩行と転倒時の上記3つのセンサ信号パターンをそれぞれ数種類取得した。その内、通常安定歩行時と転倒時のそれぞれの場合において3つのセンサ信号パターンを隠れマルコフモデル(HMM)を使用したデータ処理系に入力し学習を行うことにより、転倒に向かう危険な状態と安全な状態を時々刻々判定するシステムを構築した。そのシステムに学習に使用していないセンサ信号パターンを入力した結果、転倒状態に陥る充分前にその予測が可能であることや安定歩行状態の確実な判定が行えることを確認した。
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