本年度は、制御そのものの詳細検討よりも、新しいリニアモータの構成を試行錯誤的に考案する作業に重点を置いた。すなわち、生体機構の模擬などを想定し、希土類永久磁石を組み合わせて比較的大きな推力を得ながら軽量化と推力脈動の軽減のために空心構造でモータを構成するリニアモータの概念設計を行い、その支持、および位置検知部の取り付け手段などハードウェア上の工夫について考察を行った。一方、当初想定したギャップ変動を伴う場合の実験を可能とする磁気浮上システムについて、3つの電磁石を組み合わせて三自由度の姿勢制御が可能な磁気浮上体を用いて、磁気浮上安定化および姿勢、運動制御に関して実験的検討を並行して進めた。この結果、浮上制御の安定性を保ったまま意識的に浮上ギャップを比較的大きく変動させることの出来る制御系設計に関する有益な知見を得た。さらに、研究目的の中心となる粗い位置情報しか得られない簡易形の位置センサを用いリニア同期モータの状態に関する信号を精度良く得る方法については、理論的討を中心に進めた。すなわち、デュアルレート・サンプル・オブザーバを用いたリニア同期モータ駆動における位置情報、速度情報の推定の特性を、動的な挙動のシミュレーションを通じて評価した。一周期十数パルス以上得られる位置センサをもつ構成で、駆動方向にあまり大きな外乱力が無い使用環境では、低速までの位置制御を含む駆動が、提唱したオブザーバを用いる方法のみで行える。一方、一周期にホール素子を3つだけ配するような非常に簡単な位置検知の方法では、低速駆動部に細かな位置情報を得る付随的な位置検知の手段が必要となる。そして、粗い位置信号からの推定情報とこの付加的な位置検知のつなぎ部分には、制御に用いる信号が不連続になることを回避するために工夫を要することを確認し、その方法論をまとめた。
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