21世紀の電力需要に対処するため高温超伝導ケーブルの開発が各所で進められているが、その実現にあたっては絶縁材料の選定が重要なポイントである。絶縁方式の一つとして、絶縁紙-液体窒素複合絶縁系があるが、液体窒素の気化に伴う気泡発生による部分放電劣化が懸念される。そこで、著者らは絶縁紙内部の空間を氷で満たし電極間の液体窒素を極力排除した絶縁紙-氷複合絶縁系を考案し、これまで研究を進めてきた。これまでに、絶縁紙3層での実験の結果、試料氷結させることにより絶縁破壊の強さが上昇すること、徐冷氷結試料の場合にはFbが急冷氷結試料よりも上昇することなどを報告してきた。また、絶縁紙-氷複合絶縁系では導電性異物の混入によるFbの低下への影響が絶縁紙-液体窒素複合絶縁系に比べて少ないことなどが確認されている。今回は、多層絶縁紙-LN_2複合絶縁系と多層絶縁紙-氷複合絶縁系における導電性異物混入による寿命特性の変化などについて実験を行った。その結果、氷結試料は非氷結試料に比べ寿命が長く、また、非氷結試料における異物の有無による寿命差は見られないが、氷結試料の場合は異物有の方が異物無の場合より寿命が短くなることがわかった。非氷結試料では部分放電が発生し易く絶縁耐力が低いため異物の有無による寿命差が見られず、氷結試料では氷により絶縁耐力が上がるため、弱点となる異物の存在により寿命が低下すると考えられた。部分放電開始電圧の3倍もの電圧を印加した場合でも氷結試料は非氷結試料に比べ寿命が長く、さらに、氷結試料は異物の存在により寿命は低下するものの、非氷結試料に比べ依然寿命が長いことが明らかとなった。その他、この紙-氷絶縁に関連する極低温領域における絶縁破壊や部分放電の研究も行った。
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