地球温暖化効果が大きいSF_6ガスを用いるガス遮断器の代替機器の選択肢を増やすため、環境負荷が小さい真空遮断器の高電圧化・小型化を目指して研究をおこなっている。真空中の沿面放電は高電圧印加による固体絶縁物表面の帯電現象が引き金になるので、絶縁特性の向上には帯電現象の解明とその抑制が肝要である。本年度の研究成果をまとめると以下のようになる。 (1)真空バルブの材料の一つであるパイレックスガラスを主な対象として交流電圧による帯電特性を明らかにするため、これまでに直流電圧による研究実績がある比較的短い(長さ10mm)円柱型試料について、交流電圧による帯電特性を調べた。この測定には開発済みの陰極埋め込み型の静電プローブ法を適用した。この測定によって電圧位相に無関係に試料表面が正に帯電することなどの基本的な帯電特性を明らかにした。また、電圧印加時間が長くなると帯電開始から、準安定状態を経て安定状態に至る状態変化が起きることを明らかにした。さらに、これまでに直流電圧で得た結果と同様に、表面を粗くすることで帯電が抑制できることを明らかにした。 (2)実用機器に近い試料長さにおける帯電特性を調べるため、長さが50mmまで研究対象を広げて円柱型試料の直流および交流電圧による帯電特性を調べた。その結果、直流、交流電圧ともに長さを50mmまで拡張しても表面を粗くすることによる帯電抑制効果があることを確認した。また交流電圧に対しては長さを50mmまで拡張しても帯電電荷の位相による極性、電圧印加時間による帯電状態変化などの点で、上記の単尺試料と共通の特性を有することを確認した。 (3)長さ50mmの円筒型試料を作成し、陰極埋め込み型の静電プローブ法により円筒内面の直流帯電特性を調べるとともに、帯電シミュレーションを実施した。これらにより、円筒型の場合、円柱型に比べて帯電しやすくなること、また、表面を粗くすることによる帯電抑制効果はあるものの、円柱型試料の場合よりもその効果は小さいことなどが明らかになりつつある。
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