研究課題
地球温暖化効果が極めて大きいSF6ガスを用いるガス遮断器の代替として選択肢を増やすため、環境負荷が小さい真空遮断器の高電圧化・小型化を目指して研究を行った。真空遮断器の高電圧化には絶縁支持物の帯電現象を把握し抑制することが肝要である。しかし、交流電圧による絶縁物の帯電特性は文献にもほとんど記述はなく未解明である。そこで、前年度に引き続き基本的形状である円柱型試料について、静電プローブによる帯電測定や数値解析を行い、直流電圧と交流電圧の帯電現象の違いを明らかにした。円柱型絶縁物はアクリルまたはパイレックスガラス製で、直径が54mm、長さが10〜50mmであり、実用的にも意味のある大きさである。直流・交流電圧ともに印加電圧にほぼ比例して帯電量が増大し陰極電界(帯電電荷成分)が高くなるが、交流電圧では、試料長さによらず、陰極電界が電圧位相に応じて変動する準安定状態、および位相による変動のない安定状態があることがわかった。帯電抑制法として試料の表面を平均3・m程度に荒らす極めて簡易な方法が直流・交流ともに有効であるがわかった。一方、長さ20mm以上の試料では陰極電界が数値解析による理論値の60〜70%にしかならないことがわかった。遮断器の真空ボトルを模した円筒型試料についても帯電特性を調べ、円柱型試料との違いを検討した。円筒の内径は50mmφ、長さは10〜50mmである。円筒型絶縁物を真空容器中においた場合、試料の内面、外面ともに帯電するおそれがあるので、これを避けて内面のみの現象を観察するため内面粗さを0.1μm以下とし、外面粗さを3・m以上とした。これにより円柱型試料における帯電特性との違いを明らかにした。その結果、長さ20mm以上の円筒型試料では円柱型よりも帯電量が大きいこと、および長さ10〜50mmまでの全範囲で測定値と理論値がほぼ一致することが分かった。また、内表面の粗さを大きくして帯電抑制効果を調べたところ、円柱型試料の場合よりも効果が小さいことが分かった。以上のように、円筒型は円柱型より帯電しやすい性質があることが明らかになった。これらの結果より、遮断器の真空ボトルの場合、円柱型の場合よりも一層の帯電抑制策を導入する必要のあることを明らかにした。
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