本年度は、遷移金属酸化物水和物ゲルの複合膜を作成する為に、スピンコート薄膜作成器の購入を行い実験用セル等の準備を進めている段階であるが、この準備を進めて行く段階において、主な光学変換材料としてのタングステン酸ゲルがその形成過程において当初予想していた以上に白濁するという現象が観測された。試料の白濁は、光が試料内部へ進入して光電変換される前に試料外へと排出される事を示し、実効的な試料内部への進入光量を著しく低減し性能に大きな低下を与える。この事は本研究の成果に大きな影響を与えると考えられ、対処を至急行う必要があると考えられる。白濁現象は、光の散乱が極度に大きくなった場合に生じるが、その様相を大きく支配するものの1つは散乱体の大きさである。従って、白濁現象を抑える為には遷移金属酸化物水和物ゲルクラスターの大きさを小さくする事が1つの対処法として考えられるが、機能特性は巨視的にゲルとして存在している時に生じる事が知られており、ゲルクラスターの大きさを減ずる事は変換特性を小さくする事につながると考えられる。従って、本研究においては、白濁現象を抑える方法として散乱体とそれを分散する溶媒の屈折率の関係を変化させる方法を用いる事にした。ゲルクラスターが大きくとも両者の屈折率差が小さければ散乱能を小さく出来る事を利用して、現在までシンクロトロン光によるSAXSを用いたキャラクタリゼーションも併用する事により、ゲルクラスターがある程度成長し白濁した試料の溶媒を様々な液体に置換し白濁現象が抑えられないかの検討を行っており、まだ再現性の問題が残っているが、溶媒をエチルアルコール等に溶媒置換をした際に白濁の度合いの小さい試料を作成できる事が分かりつつある。今後は、この白濁の問題を十分に検討し、白濁の小さい試料を用いて変換セルを作成する予定である。
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