| 研究概要 |
本研究では,積層鉄心を有する電気機器の磁界解析の精度向上のため,積層鉄心の鋼板中の渦電流およびヒステリシス現象を考慮したモデリング手法の開発,および検証実験に関する研究を行う.本年度に得られた成果は以下の通りである.
1.マイクロマグネティックスを用いたヒステリシス現象のモデリング手法の開発
ヒステリシス現象の考慮方法として,昨年度,物理的なモデルであるマイクロマグネティックスのソフトウェアを開発し,少ない分割数でもヒステリシス曲線が描けることを明らかにしたが,今年度は,さらに実際の物理現象である磁性体の磁区構造も考慮できる方法に拡張するため,マイクロマグネティックスを大きな磁区構造を有する磁性体に適用する方法について検討し,分割を粗くした場合に生じるエネルギーなどの誤差を理論値を用いて補正することにより,大きな磁区構造を表現できるヒステリシスのモデリング手法を開発した.
2.モデリング手法の検証
昨年度製作した積層鉄心の検証用モデルの解析を行い,鋼板中の渦電流は,周波数が50Hzの場合には無視できるが,1kHzの場合には考慮する必要があることを明らかにした.また実測も行い,50Hzでは解析と実測値が一致したが,1kHzの場合には差が生じてしまい,今後,さらに詳細な検討を行う必要がある.また,実機による検証として積層鉄心を有する磁気軸受の解析を行い,実測値と比較することにより,積層鉄心の解析では,積層構造のモデリングだけでなく鉄心表面の短絡層の考慮も必要であることを明らかにした.
3.磁気測定の精度向上
積層鉄心から生じる微小な漏れ磁場の精度よい測定法を確立するため,ホール素子やフラックスゲートを用いた測定システムを構築し,磁性体を積層した磁気遮蔽装置の空間分布の測定に適用し,解析と実測で得られた結果を比較することにより,解析および測定方法の妥当性を示した.
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