本年度の研究で得られた結果を要約すると、 1.電気学会の標準1機モデルを対象として、発電機・システムのパラメータおよび負荷が不確定であることに注目して、パラメータの過渡安定度に対する標準1機モデルのロバスト性を調べ、PSSの場合と比較した。そして実システムの不確定なパラメータを考慮し、提案制御法による標準1機モデルのロバスト性の向上をシミュレーションにより検証した。ただし、線形システムのロバスト性については理論解析がすすめられているが、本課題ではモデル(非線形システム)に平衡点解析を適用し、PSSの場合に得られる結果と比較した結果、ロバスト性はかなり向上することが分かった。 2.新エネルギーを含む分散型電源が急進展しており、標準1機モデルに分散型電源を考慮した負荷を動的に考慮した場合の平衡点解析をすすめ、提案する非線形補助制御入力を加えることによる不安定平衡点の移動を調べ、PSSの場合に比較して臨界故障除去時間は20%、送電可能容量は90%それぞれ向上することが分かった。ただし動的負荷特性については学会などで発表されている実測値に基づいて、動揺方程式に考慮して解析を行った。 3.変電所における電圧・有効電力・無効電力の実測データに基づいて、動的負荷を考慮した負荷のモデル化を行い、動的負荷を含む負荷P-V曲線を求めた。さらに標準1機モデルから系統P-V曲線を導出し、二つのP-V曲線の交点(運転点)を求めて電圧安定度の解析手法を提案した。提案法により、日本、スウェーデン、中国の実測データから各負荷構成を求めて比較し、解析結果から、電圧不安定現象が発生する負荷構成を提案することができた。次年度は、動的負荷を含む多機システムへ提案手法を発展させる。
|