(1)本年度は、昨年度の研究でバリア放電のモードが、バリアの温度や材料で大きく変わることを見出したのを受けて、第1の検討項目として、なぜそのような変化が起こるかを、針対平板電極構成で、1サイクルに1度だけバリア放電が起こる実験装置により検討した。その結果、バリア温度の上昇は、バリア沿面の放電距離を伸ばすこと、その沿面放電の先端付近で、靄状のグローに近い放電が生じることが分かり、これがバリア放電のモード変化に大きく関係していると思われること明らかにした。また、円筒電極を並列に並べた電極構成で、ライン状のバリア放電のモード変化も観測した。 (2)排ガスに尿素水から発生させたアンモニアを混合し、放電、SCR触媒などと併用したときのNOx除去性能を調べる実験を昨年度に引き続いて行った。昨年度は、アンモニアの発生が不十分だったが、今年度はほぼ予定に近い量のアンモニアの発生に成功した。排ガスに尿素水から生成したアンモニアを注入し、放電、触媒とのいろいろな組み合わせでNOx除去実験を行った。その結果、排ガスにアンモニアを注入しただけでは、わずかではあるがかえってNOxが増えること、アンモニアを注入した排ガスをバリア放電で処理した場合は、アンモニアを注入しない場合とほとんど差が無いこと、アンモニアを注入した排ガスをSCR触媒に作用させても、200度C付近の温度ではほとんどNOxは減少しないこと、アンモニアを注入した排ガスにバリア放電処理をして、SCR触媒部に通とNOx除去量は増えること、特にSCR触媒の温度を200度C付近で触媒が作用することを確かめることができた。 (3)プラズマによる排ガス浄化法の総合評価についての検討結果は以下のとおりである。ディーゼルエンジンの排ガスをプラズマで浄化する方法では、排ガス再循環法により、あらかじめエンジンから出るNOxの濃度を減少させておく方法がもっとも有効である。同様な方法として燃料に水と混ぜた水エマルジョン燃料も効果的であるが、適用のやさしさから、排ガス再循環法がよいと判断される。尿素水からアンモニアを発生させ、SCR触媒を使う方法は、放電装置を高温にする必要があり、放電の安定性などに問題を生じる。排ガスに炭化水素を添加する方法も効率はよいが、炭化水素のコストが放電と同程度となり、最良とはいえない。直接放電とオゾン注入法の比較では、放電装置が汚れないメリットのあるオゾン注入法がすぐれている。 以上のように、本研究計画にあげていた目標はすべて達成する成果が得られた。
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