大気圧空気中の直流コロナ放電によるアクリル誘電体円板への帯電現象と、その帯電電荷が放電開始電圧に与える効果を系統的に調査した。主な結果を要約すると次のようになる。 (1)アクリル円板直径とコロナ放電の帯電電圧と極性を変化した場合、アクリル円板表面の帯電はギャップ長の数十倍の広い領域に認められた。この理由は、帯電電荷がコロナ放電形態に影響を与えながら帯電コロナ放電を停止するまで帯電が継続するためである。 (2)帯電した状態で、印加電圧を降下し逆極性の電圧を印加した場合、表面帯電電荷の強力な空間電荷電界作用が認められた。すなわち、帯電していない場合のコロナ放電開始電圧に比べて、極めて低い電圧で放電が発生した。このことは、複合電気絶縁システムでは一度コロナ帯電が起こると逆極性電圧または電圧低下時に再び放電が起こり、絶縁劣化が急速に促進される。 また、表面電荷分布の形状を把握するために、表面電位の高精度計測法を確立した。この方法は直径32cmアクリル円板の表面電位分布を自動計測するものである。従来の方法が数cmの局所帯電を目的とするのに対して、本方法は広域帯電計測に適する。 (1)直径4〜32cmのアクリル円板の表面帯電電荷分布の相違を明らかにすると共に、逆極性放電による電荷中和現象を明らかにした。 (2)さらに、表面電荷分布の長時間減衰過程を計測し、帯電中心部のより速やかな電荷減衰をとらえ、クレター状の分布を得ている。 さらに、平等電界ギャップ中に2mmの鋼球をつるして、パルスレーザによる鋼球帯電を実現した。実験を開始したばかりであるが、帯電電荷量の可変で破壊電圧が制御できる可能性を得ている。この実験法は本研究で初めて開発したものである。
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