研究課題
樹脂と導電性粒子(カーボンブラック)から成る複合体は固体高分子形燃料電池(PEFC)用セパレータの部材候補である。本年度は耐熱性・耐久性に主眼をおいている。得られた結果を以下に列記する。(1)ポリプロピレン(PP)とポリフェニレンサルファイド(PPS)に球状黒鉛をした複合体を作成した。NEDO目標値である抵抗率10mΩ・cm以下に至らなかったが、数十mΩ2・cmまでは達成できた。一方、曲げ強度、曲げひずみに関しては、NEDO目標値である曲げ強度50MPa以上かつ曲げひずみ1%以上に対し、PPでは達成不可能、PPSでは達成可能となった。(2)PEFC動作温度での機械的特性を測定した。PPから成る複合体では全く強度が保てず、PPSでは常温時の80%以上の強度を保つことができた。(3)耐久試験において、PPSから成る複合体では、表面が粗くなり表面張力が親水性へと変化したが、電気・機械的特性においては大きな特性変化は確認されなかった。(4)PEFCの軌道・停止による応力サイクル試験を想定し、90℃にて圧縮・開放試験を1000回おこなったが、試料厚に変化はなく、抵抗率は低くなり、弾性率が増加した。(5)有機成分としてポリジメチルシロキサン(PDMS)、無機成分としてテトラエトシキシラン(TEOS)から成る200℃を越える耐熱性を有する有機-無機ハイブリッドのゾル液状態でカーボンブラックを導入し、複合体を作成した。ベスト抵抗率は400mΩ・cmと極めて悪く、脆弱な複合体となった。PDMSの分子量制御という基礎からの検討が必要である。(6)PP、PPSに比べ耐熱性が劣るが、抵抗率が低い熱可塑性樹脂(TPE)と球状黒鉛(SG)を用い、異なる2種類の成形方法で樹脂・黒鉛複合体セパレータを試作し、単セルスタックを作製して、電流電圧特性試験、交流インピーダンス試験、定電流モード試験からPEFC及びセパレータ性能の評価を行った。セパレータの電気的・機械的特性及び撥水性は成形方法により差異が生じた。試作セパレータ搭載の単セルスタックは定置用PEFCとして十分使用可能なセル電圧を有していることが示された。セル電圧の安定性はセパレータの撥水性を抑えることで改善された。
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Molecular Crystals and Liquid Crystals 464
ページ: 835-843
Organic Materials for Electronics and Photonics, KOREA-JAPAN JOINT FORUM 2006
ページ: 167