本研究は、色素増感太陽電池、光触媒、燃料電池など、多くの用途がある酸化チタンナノ微粒子による多孔質膜に関するものである。この多孔質膜の応用において、膜の活性化を促進するためには、微粒子自身の高機能化が必要である。この観点から、本年度は、微粒子自身の導電性や結晶性の改善、微粒子の二次加工による活性化の検討を試みた。 1、ゾルゲル法にて、ニオブがドープされたチタニアの合成を行った。ニオブを0.3wt%含むチタニアで作製した色素増感太陽電池の効率が最も高くなった。ニオブのドープにより、電子拡散定数が改善されていることもわかった。2、結晶性の改善に関しては、チタニア微粒子を熱処理することにより検討した。熱処理は、結晶粒径が大きくなるため、表面積が低下した。その結果、色素吸着量が減少したが、欠陥等が減少するためか太陽電池の効率は改善できることがわかった。結晶がアナターゼ型からルチル型へ転位する温度以下の650度での処理が効果的であった。3、微粒子の二次加工は、チタニア微粒子への白金担持により実施した。この微粒子を厚膜として機能させるために、白金担持微粒子を硝酸チタニル溶液中に分散して、ディップ法にて粒子を積層、微粒子間の結合の強い膜を製膜した。熱処理後、基板に対する付着性が良好な多孔質膜を得ることができた。この膜を燃料電池として利用した場合、微弱な紫外線の照射により、膜の被毒を抑制でき、反応活性を持続することが可能となった。4、チタニア微粒子は、表面の状態により酸性を示すものと塩基性を示すものが知られている。各微粒子の混合割合を調整して、多孔質膜を製膜した。得られた膜の光触媒活性を調べたところ、塩基性の強い膜のギ酸酸化反応の活性が高いことがわかった。
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