本研究は、色素増感太陽電池、光触媒、燃料電池など、多くの用途がある酸化チタンナノ微粒子による多孔質膜に関するものである。この多孔質膜の応用において、膜の活性化を促進するためには、微粒子自身の高機能化が必要である。この観点から、本年度は、(1)色素増感太陽電池用のチタニアペーストの開発、(2)チタニア薄膜の新しい製膜法の開発、(3)Pt担持チタニアを含む燃料電池の作製を実施した。 (1)酸化チタン粉末、アセチルアセトン、PEG、硝酸を調整することにより、1回の塗布で、10μm程度の膜厚が得られ、焼成後多孔質となるペーストが作製できた。色素増感太陽電池として市販ペーストと同等の特性を持つ電池が作製できた。市販ペーストは、1回に塗布できる膜厚が薄いので、本研究で調整したペーストは、製膜工程のコスト低減に寄与できる。 (2)酸化チタン前駆体のチタニルを含む水溶液に紫外線を照射することにより、チタニア薄膜が製膜できることを新しく見出した。特に導電性ガラス基板上の透明導電性皮膜の上には強く付着した。熱処理後は、アナターゼの結晶構造を示した。この薄膜を色素増感太陽電池の多孔質チタニアと透明導電性皮膜間に必要な緻密チタニア層として利用したところ、色素増感太陽電池特性の改善に寄与できることがわかった。 (3)Ptを担持した酸化チタン微粒子を作製して、これを通常燃料電池に利用するC-Pt触媒ペースト中に混合した。30:1=C-Pt : TiO2-Pt程度の比率であればC-Ptのみで構成した燃料電池の特性と同等の電流電圧特性が得られた。なお、光照射可能なセルがないので、光による影響を調べることはできていない。
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