本研究は、色素増感太陽電池、光触媒、燃料電池など、多くの応用分野がある酸化チタンナノ微粒子による多孔質膜や薄膜の形成に関するものである。これら多孔質膜の応用において、膜の活性化を促進するためには、微粒子自身の高機能化や微粒子間結合の改善、さらに導電性薄膜や金属などとの接触界面の最適化が必要となる。こうした観点から、最終年度である本年は、昨年度開発した液相から合成されるチタニアの応用にのみ焦点を絞り、その検討を行った。応用に関しては、液相から製膜したチタニア薄膜の色素増感太陽電池と光触媒への応用に関する二つの開発項目について研究を実施した。具体的には、色素増感太陽電池に対しては、チタニア粒子間の結合を改善する後処理用の前駆物質として、このチタニル溶液と通常用いられる四塩化チタンによる処理を比較した。現在までのところ、四塩化チタンからの処理では、アナターゼとルチルの両結晶が混在すること、チタニル溶液の処理では、アナターゼのみの結晶となることがわかった。ルチル結晶は再結合を起こし易く、色素増感太陽電池では、チタニル溶液による処理の方が有効であることがわかった。光触媒に対しては、チタニル溶液から得られる膜を、さまざまな電気特性・結晶配向を持つフッ素ドープ酸化スズ膜(FTO)上に製膜して、FTO基板がチタニア膜に与える影響を、メチレンブルーの触媒活性を指標として調べた。この実験の結果より、フッ素を多く含み、塩素の少ない基板の触媒活性が優れている傾向が確認できた。
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