太陽電池の効率は一般的に反射損失、量子効率、表面および内部欠陥密度、直列抵抗により決定される。本年度においてはその内、反射損失の低減に焦点をあて、単結晶および多結晶シリコンウェハに対して三フッ化塩素を用いたプラズマレスドライエッチングによるテクスチャー化を行い、電子顕微鏡による表面構造観察、光学的反射率評価、太陽電池の作製・電気的特性評価を行った。 単結晶鏡面の基板において、室温で三フッ化塩素分圧9Pa程度の希薄な処理条件でも10分以内に波長500nm反射率が8%程度と鏡面に比べて5分の1程度に減少することが分かった。さらにエッチング処理を続けると反射率はやや増加した。同様な傾向が多結晶シリコン基板に対しても見られた。表面観察からエッチング初期では極めて小さい凹凸が現れ、徐々に大きな凹凸が現れていた。ところが、上記の条件で処理した極めて小さい凹凸のみを有する面に対して、その後に不純物拡散工程を経ると反射率が増加することが分かった。なおこの傾向は不活性雰囲気における熱処理のみでも見られたため、反射率増加の原因は不純物ではなく、熱による微細凹凸構造の変形と考えられた。そこで、マスクパターニングと三フッ化塩素分圧600Paにけるエッチングによりハニカムテクスチャー構造を形成し、反射率評価を行った。この場合は、不純物拡散工程による反射率変動が起こらなかった。ハニカムテクスチャー構造を用いた太陽電池試料を作製し、発電特性を評価したところ、鏡面太陽電池と比較して、短絡電流および発電効率が約3割増大することを確認した。
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