研究概要 |
磁性薄膜の表面形態および磁区構造をプローブ顕微鏡で観察し、試料温度が表面形態や磁区構造に及ぼす影響を中心に研究を行なった。項目別の研究実績は以下の通りである。 1.磁区構造観察の分解能向上 プローブ顕微鏡の試料室を10^<-4>Pa以下に真空排気した状態で試料冷却および低磁気モーメントの磁性探針を用いることにより、磁気情報の観察分解能を15-20nm程度まで向上させた。 2.加熱冷却および磁界を加えた状態における磁区構造観察技術の開発 -100〜300℃の温度範囲で磁性薄膜の同一箇所の磁区構造変化を観察する技術を開発した。この技術を80-110Gb/in^2の面記録密度を持つ面内および垂直磁気記録媒体に適用し、加熱に伴う高密度磁気記録状態の熱緩和現象の直接観察を行った。この結果、記録様式による熱緩和現象の相違を示すとともに、同一記録方式の同様なビット長であっても磁気緩和は観察場所によって微妙に変化することなどを明らかにした。なお磁界と温度の両方を独立に制御して磁化状態の観察を行う技術は現在継続検討中である。 3.磁気力顕微鏡データの解析技術の開発 試料温度や磁界を変化させて観察した同一箇所の磁気力顕微鏡像の画像データもしくはラインスキャンデータの差をとることにより、磁化状態の微小な変化を検出する技術を開発した。この技術を各種磁気記録媒体観察に適用し、磁気緩和現象解析を行った。 4.エピタキシャル法による単結晶磁性薄膜の形成 超高真空MBE法により、Al_2O_3(0001)単結晶基板を用いてCoエピタキシャル膜の形成を行った。バッファ層材料としてAu,Cu,Agを用いることにより、hcp-Co膜、fcc-Co膜、およびhcp/fcc混在Co膜の単結晶薄膜を得た。これらの薄膜の微細構造や磁気特性を調べ、Co薄膜の結晶構造との相関解析を行った。 5.上記研究結果の学会発表など 上記一連の研究で得られた結果を、2国内会議、3国際会議で計11件の発表として公表するとともに5件の論文に纏めて学会投稿した。
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