研究概要 |
リチウム(Li)イオン二次電池(LIB)の炭素負極材料に使う材料のPolypara-phenylene(PPP)およびPPP焼成炭とコンポジットして電極材を作成する異方性ピッチの熱処理を行った.熱処理した各試料の粉体状での電気抵抗測定を行うとともに,コイン型のLIB炭素負極セルを作成し,充放電実験を行った.異方性ピッチの炭素化,黒鉛化過程における組織及び構造の変化を,偏光顕微鏡及び透過電子顕微鏡(TEM)で観察した.この結果,異方性ピッチ焼成炭における特異な構造は,熱処理過程で膨張する試料の気孔壁に起因していることがわかった. 次年度以降に予定していた財団法人高輝度光科学研究センター(Spring-8)の課題申請が採択されため,高エネルギーX線によるPPP焼成炭(熱処理温度720℃)の構造およびLiイオン挿入状態を調べる実験を行った.この結果,PPP焼成炭では同一網面内において0.8nm程度までの大きさの炭素六角網面の構造が存在することが示された.一方,異なる積層の間の原子間の関係についてみると相関は非常に弱くなっていることがわかった.アモルファス構造と考えていたPPP焼成炭は,0.8nm以下の網面がやや乱れて積層したBasic Structural Unit(BSU)を有していることがわかった.TEMによる格子像では各所に2〜3層の網平面の積層が観察され,その平行性は低い.これは本実験で得られたBSUに関する結果と一致した.Liを挿入したPPP焼成炭の試料についても測定も行ったが,Liの挿入による変化を分析することはできなかった.これはLIBの電極作成時にPPP焼成炭に混合した10wt%の有機物質を含むバインダーの影響が強く出たためと考えられた.この結果から,今後PPP焼成炭の細孔構造解析を進め,Liイオンの挿入サイトを検討していきたい.
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