研究概要 |
Bonnamy博士(フランス国立科学研究センター物質研究所(CNRS-CRMD)),Oberlin博士と,これまで進めた共同研究の実験結果をまとめ,炭素材料に関する国際会議(CARBON2006,英国)で研究成果を発表するとともに,関連の論文にまとめた.この論文は炭素材料の黒鉛化に関する指標ともいえる内容である.ほとんどの石油系および石炭系のピッチの組織は等方性であるのに対し,現在研究をしているピッチの組織は完全に異方性であり,化学的には分子量の少ないβレジンにより構成されていることが興味深い.このようなピッチは炭素繊維や粒状炭素などとの複合材を構成するための含浸用の用途に応用できると考えられ,現在,リチウム(Li)イオンニ次電池(LIB)の炭素負極材料としてPolypara-phenylene (PPP)焼成炭とのコンポジットによる電極を作成し,充放電実験を行っている.昨年はPPP焼成炭の構造を財団法人高輝度光科学研究センター(Spring-8)のビームライン(BL04B2)を利用して解析し,透過電子顕微鏡(TEM)によるPPP焼成炭の観察結果とSpring-8での高輝度X線による解析結果との検討を行った.本年度は,PPP焼成炭と上記の異方性ピッチとをコンポジットして作成したコインセル型の炭素負極により,LIBの充放電実験を行った.一度に10個のセルの実験が可能であり,コンポジットの条件,充放電の電流条件などを変えて実験データを集めている. 来年度は,再度Spring-8のビームラインBL04B2を利用できることとなり,熱処理温度の違いによるPPP焼成炭の構造変化,充放電時のリチウムの挿入サイトおよび挿入状況の確認,充電時に形成されるSEI皮膜の状況などの検討を行う予定である.また,PPP焼成炭の気体吸着特性とLi挿入サイトの一つと考えられる細孔構造との関係を検討する.
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