研究概要 |
財団法人高輝度光科学研究センター(Spring-8)のビームライン(BL04B2)を利用して,Polypara-phenylene(PPP)焼成炭の600〜900℃の熱処理温度の違いによるPPP焼成炭の構造変化,充放電時のリチウム(Li)の挿入サイトおよび挿入状況の確認等を行った.その結果,熱処理温度が高くなるに従い,10Å以下からこれを超える大きさの微細グラファイト構造(Basic Structural Unit: BSU)へと発達していることがわかった.この成長の度合いは小さく,PPP焼成炭が難黒鉛化炭素であることを示している.またLiを充放電した試料は一様にX線回折強度の減衰が起こった.これは充電第1サイクルにおいてSEI皮膜が形成されており,その後安定していることが推定された.放電時には,回折結果に充電時とは異なる特徴的なピークが現れ,リチウム放電後に,変化した構造が残されることが推定された.充放電サイクルが繰り返されると,X線回折データの低角側に変化が現れ,充放電により電極であるPPP焼成炭の構造が壊れて行くことが考えられた.Liの充電時および放電時において微細グラファイト構造内の層間距離に変化がみられないことから,Liは,グラファイト層間にインターカレーションするのではなく,BSU間の微細空間に蓄積されるものと推定された.これらの実験からグラファイトの原子数密度と比較してPPP焼成炭のそれは約44%と見積もられ,差分の約56%がBSU間の微細空間であり,この空間がPPP焼成炭を利用した場合の高い充放電容量に寄与していると考えられた.このような微細空間にLiがトラップされるため,放電時にLiがある程度エネルギーが必要となり,電池の特性を下げていることがわかった.
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