研究概要 |
本研究は高結晶性黒鉛材料に比べ,より大きな容量が期待できる低結晶性炭素とナノカーボンを含む高導電性炭素材料を用いて,新たな負極用コンポジット炭素材料の開発を行うことによりリチウムイオンニ次電池の大容量・高性能化を目指した. コンポジットするそれぞれの電極材料について,炭素化,黒鉛化過程における組織および構造の変化を,偏光顕微鏡及び透過電子顕微鏡(TEM)で観察した.また,財団法人高輝度光科学研究センター(Spring-8)のビームライン(BL04B2)の高輝度X線を利用した実験が2度採択され,熱処理温度の違いによるPPP焼成炭の構造変化,充放電時のリチウムの挿入サイトおよび挿入状況の確認,充電時に形成されるSEI皮膜の状況などの検討を行った.PPP焼成炭の600〜900℃の熱処理温度の違いによるPPP焼成炭の構造変化,充放電時のリチウム(Li)の挿入サイトおよび挿入状況の確認等を行った,その結果,熱処理温度が高くなるに従い,1nm以下からこれを超える大きさの微細グラファイト構造(BSU)へと発達していることがわかった.しかし,この成長の度合いは小さく,PPP焼成炭が難黒鉛化炭素であることを示している.Liは,グラファイト層間にインターカレーションするのではなく,BSU間の微細空間に蓄積されるものと推定された.この微細空間がPPP焼成炭を利用した場合の高い充放電容量に寄与していると考えられた.このような微細空間にLiがトラップされるため,放電時にLiがある程度エネルギーが必要となり,電池の特性を下げていることがわかった.PPP熱処理炭に他の異なるナノ構造の炭素を付加してコンポジット材料を作成することにより,PPP熱処理炭の高い容量を維持したまま,電気抵抗を下げるとともに電流容量を増やせるなど電気特性を向上できることがわかった.
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