研究概要 |
究極の磁気記録媒体として、磁性ナノ粒子が孤立して配列した"ナノパーティクル媒体"が考えられている。本研究では、ガスフロースパッタ(GFS)法によりその作製に関する基礎的な研究を行った。GFS法は100Paレンジの高い圧力で成膜を行うスパッタ法であり,低エネルギープロセスのため堆積原子の表面マイグレーションは抑制され,さらに,自己陰影効果も大きいことから,粒界が発達した微粒子薄膜を容易に作製できると期待される。先ず、ガラス基板上に10〜30nmのCo-Pt薄膜を堆積したところ、粒径が5nm程度の結晶粒子から構成された無配向のhcp構造膜が得られ、Ptが25at%において保磁力は4kOe以上の値を示すことを明らかにした。他の作製法によるCo-Pt薄膜に比べ、粒径は半分以下であり保磁力は4倍程度大きなものである。次に、垂直磁化膜の作製を目指して、マグネトロンスパッタにより堆積したPt(111)下地上にCo-Pt膜を堆積させたところ垂直磁化膜が得られ、垂直保磁力が4kOe以上を示すことを明らかにした。これらの試料についてTEM観察したところ、明瞭な粒界が観測でき、個々の粒子は幅が10nm以下であり、hcp構造のc軸配向した単結晶であることがわかった。さらに、この試料をArガス中で250℃程度の低温でアニールすると、結晶粒界の磁気的分離が促進され、保磁力が7kOe以上に増大することを見出した。これらの粒子構造と磁気的特性は垂直磁気記録媒体としての基本的条件を満足するものであり、GFS法により低温でこのような薄膜が得られることは将来のナノパーティクル媒体の作製を期待させるものである。すなわち、下地に規則的な結晶成長核を形成することができれば、この手法によりナノパーティクル媒体が作製できるはずである。本研究により、ナノパーティクル媒体作製の一つの道が開かれたと言っても過言ではない。
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