研究概要 |
本研究は,帯電物体の移動が誘起する静電誘導現象によって電子機器内部の導体に生じる過電圧や放電と同時に放射される電磁パルスの特性を,実験によって明らかにすることを目的としている。平成18年度は,球ギャップ間の火花放電を利用した静電誘導電圧の測定と,静電気放電によって放射される電磁パルスの測定を行った。 (1)静電誘導電圧の測定 接地していない金属筐体内に生じる静電誘導電圧は,接地した金属筐体内に生じる電圧よりも数倍高くなることを明らかにした。これは,非接地金属筐体内の電子機器が容易に誤作動する可能性を示唆している。さらに,金属筐体内に配置した二つの導体の面積比を変化させて金属筐体内に生じる静電誘導電圧を測定し,静電誘導電圧が導体の面積の増加とともに高くなることを明らかにした。この結果は,電子回路基板の設計に役立つと思われる。また,静電誘導電圧によって二つの導体間で生じる放電は,片側の導体を接地した場合は2回,導体のどちらも接地しない場合は多数回起こり,帯電した物体が金属筐体の近くを通過すると,金属筐体内の導体の電圧極性は帯電物体が金属筐体を通過する前と後で異なることを明らかにした。これは,帯電物体の移動により,電子機器内部のディジタル論理回路エラーが容易に起こることを示唆している。 (2)静電気放電による電磁パルスの測定 球ギャップ間での静電気放電による電磁パルスの特性を光電界センサーで調べた。実験では,リレー回路によって球電極の印加電圧を遮断する装置を作製して放電を1回に限定した。球ギャップ間を調整して放電電圧を変えた実験を行ったところ,放電電圧が低い電圧ほど立ち上がり時間の早い高周波成分(本実験では50MHz以上)を持つ電磁パルスが発生することが分かった。これは,エネルギーの小さな放電でも,低電力化・高周波駆動化の傾向にあるデバイスは誤動作が容易に起こることを示唆している。
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