研究概要 |
本研究では,帯電した人体等の移動によって金属筐体内に生じるEMI(電磁障害)を明確にし,電子機器の誤動作を防止するためのEMC(電磁環境)対策,および電子機器の設計に指針を与えることを目的として,モデル実験による基礎的な研究を行った。実験では,球ギャップ間の火花放電を利用した静電誘導電圧の測定と,電気光学効果を利用した電界計測装置(光電界センサー)による誘導電圧と電磁ノイズ測定の可能性について検証を行った。 1.静電誘導電圧の測定 帯電物体が金属筐体の近くを移動したときに,静電誘導現象によって筐体内に生じる誘導電圧の測定を,球電極と電磁波検出センサーを併用することで可能にした。この測定法によって,金属筐体内の二つの導体のうち片方の導体を接地すると,誘導電圧は両側の導体が非接地の場合よりも高くなることを実験と計算から明らかにした。さらに,金属筐体内に配置した二つの導体の面積比を変化させて筐体内に生じる誘導電圧を測定し,誘導電圧が導体の面積の増加とともに高くなることを明らかにするとともに,数Vレベル(GMRヘッドは約10Vで故障が起こると言われている)の電圧未満になる安全な電子機器の設計に必要な検討を行った。また,誘導電圧によって二つの導体間で生じる放電は,片側の導体を接地した場合は2回,導体のどちらも接地しない場合は多数回起こることを明らかにした。 2.電磁パルスの測定 誘導電圧の時間的特性を調べることを目的とした実験を行うために,光電界センサーの低周波数領域における周波数特性を調べた結果,換算式を算出することで表面電位計として使用できることが分かった。また,静電気放電の特性を調べることを目的とした実験を行うために,球ギャップ間での放電を1回に限定して光電界センサーで調べた結果,放電電圧が高い場合と低い場合では,電磁ノイズの時間変化を表す波形が大きく異なることを明らかにした。
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