研究課題
本研究課題は、量子力学的な枠組みの中で電流雑音の研究を行い、雑音を通じて、ナノスケール新構造MOS素子の本質的な性能を予測することを目的としている。電流雑音には、時間平均的な電圧電流特性には現れてこない、電子間の時間的な相関(フェルミ相関およびクーロン相関)の情報など、電子輸送について補完的な情報が含まれている。1.非平衡グリーン関数法(NEGF)による電流雑音解析非平衡グリーン関数法は、電子波のコヒーレンスがデバイス動作を支配する場合に威力を発揮する量子輸送モデルである。前年度に引き続いて、ダブルゲートMOSFETのコヒーレント輸送時の電流雑音特性について、従来のストレート型および電極部の幅を広げた実際の電極を模擬するflared-out型のダブルゲートMOSFETについて解析を行った。その結果、すべての構造について、動作時のショット雑音が抑制されること、ストレート型の方が、平均電流が大きく、よりショット雑音が抑制されることが確認された。ショット雑音のエネルギースペクトルを検討したところ、電極からフェルミ統計に従って放出される電子のフェルミ相関に起因するショット雑音の抑制と、チャネル内での電子の透過特性に起因する抑制があることが明らかになった。さらにポテンシャル揺らぎに起因する雑音抑制についても検討を行った。2.量子補正モンテカルロ法による電流雑音解析室温で動作させるデバイスの電流雑音の評価に用いるため、現実的な第一原理的手法である3次元量子補正モンテカルロ法を開発し、散乱効果、クーロン相関、量子効果が電流雑音に及ぼす影響について検討を行った。電流計算に用いるRamo-Shockleyの式を拡張して解析したところ、チャネル長を10nmまで短くして、準バリスティック状態で動作させても、相対揺らぎが大きくなることはないという結果を得た。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (4件)
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