準光学的な手法を用いてミリ波を制御するデバイスを検討する場合、回折限界の制限から桁違いに長い波長を考慮に入れたデバイスの大きさが必要となる。単純に見積もっても3桁も長い波長領域であるから、数mm程度の液晶層が必要になる。従って、「複屈折」「損失」の点からより優れた液晶材料を見つける事が極めて重要である。はじめに、導波管を用いた液晶材料評価法をさらに高い周波数帯であるWバンド(〜110GHz)まで拡張した。これにより従来の数分の1の試料で測定が可能となる測定手法を確立し、種々の液晶材料の評価を進めた。これらの結果を基に、位相変調デバイスを構成し、実際に印加電圧による可変特性について調べてその有用性を確認した。また、材料の面では更なる特性の改善が望まれる事から、ディスプレイ分野で既に実績があるナノ粒子の混合による材料特性の改善効果について検討した。 次に、実際にmmもの厚さを有する液晶層を実現する方法を検討する事は実際のデバイス応用を考える上で重要である。そこで、マイクロカプセルの利用およびメンブレンフィルタ構造の利用の可能性について検討を行った。マイクロカプセルはカプセル強度の点から現在のところ液晶含有率は50%程度が限界であり、可変量の観点からは改善が望まれるが、接着剤との混合により任意の形状に加工して使える可能性が確認された。一方、積層して厚い液晶層を実現する方法としてフィルタ構造を利用する事も考えられるが、その基礎特性として導波管に封入した材料を用いて可変特性を確認することができた。
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