液晶材料を用いてミリ波帯における回折型の制御デバイスを実現するために、厚い液晶層とその駆動用電極の積層構造をデバイスの基本構造として用いる手法を検討した。はじめに、液晶の動作に無関係なガラス基板などを必要とせずに厚い液晶層を保持する方法として、フレキシブルな多孔質フィルムの代表であるメンブレンフィルタを用いて超厚膜液晶層を実現する方法を検討した。良好な液晶制御デバイスとしての動作には、液晶層を機械的に保持すると同時に液晶分子の初期配向制御が不可欠である。そこで、市販の数種類のメンブレンフィルタを用いて延伸を行いながら静電容量の測定を行い、それらの液晶分子配向性について評価を行った。SEM観察による微細構造の観察結果との比較から、細かい繊維構造を有するテフロン製のフィルムは延伸等の特別な処理を行わなくても良好な液晶分子の配向性が得られる事等が分かった。 次に、実際にある程度の大きさの積層構造を作製する事を考えると、単純な積み重ね構造では現実の作業効率が極めて悪い。そこで、回折型のミリ波レンズを作製する事を念頭に、電極を巻き取って作製するロール型の電極構造について検討した。この場合、直線偏波を入射すると不均一な透過特性となるが、プラスチックで作製したモデルレンズと組み合わせてミリ波の収束実験を行ったところ、比較的良好な収束特性が得られる事が分かった。一方で、詳しくプロファイルを比較すると収束特性に異方性が生じる様子も確認された。そこで、入射波の偏波状態として円偏波を用いたところ、透過特性が均一化される事を確認した。またこの場合、透過後に放射状に分布する偏波状態が得られる事も確認され、新たな機能を有するデバイス応用も期待される。
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