液晶材料はミリ波帯でも比較的大きな複屈折を有するが、ディスプレイ用に設計された市販のネマティック液晶は複屈折が可視の半分程度まで小さくなってしまう。そこで、通常のネマティック液晶にナノ粒子を混合する手法で何らかの改質を試みた。ナノ粒子を均一に混合する事自体が一般に難しいが、金ナノ粒子と適当な溶媒を利用して0.1wt%程度ではあるが安定な液晶との混合状態が得られた。ミリ波帯での評価では、純粋な材料との優位な違いが見出されなかったが、他の材料を探索する等によって今後の新たな展開が期待される手法と思われる。 次に、ミリ波帯での液晶応用を考えるとき、光波に比べて桁違いに長い波長から極めて厚いセル構造が必要になる事が予想される。そこで、ミクロなセルの積み重ね構造を自然に作り出す事を目的に多孔質のメンブレンフィルタを用いる方法を検討した。このとき、厚い液晶層を保持する事の他に液晶分子の配向効果も重要である。そこで、櫛形電極による静電容量測定によって面内方向の分子配向効果を評価した。SEMによるフィルタ内の微細構造との比較検討から、細かい繊維が配列する構造を持つフィルタでは延伸等の処理をしなくても良好な配向性が得られる事が分かり、その有用性が明らかになった。 さらに、プラスチックの機械加工によってモデルレンズを作製し、ミリ波帯におけるフレネル構造の有用性について調べた。4ステップ程度の分割と3周期程度の輪帯があれば良好なレンズ特性が得られる事が確認され、ミリ波用液晶フレネルレンズの設計指針が得られた。また、実際に液晶レンズを実現するためには駆動用電極を導入する事が不可欠である。そこで、多数の電極を間単に積層する方法としてロール法による積層電極を提案しその有用性を確認した。
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