研究概要 |
1.研究の対象 大電流(数A以上)用の電気接点は,開閉時に電極の一部に電力が集中し,電極が溶融し、電極間アーク放電が発生する。その結果、接点電極の損傷,磨耗,酸化,変形などが起こる。このアーク放電現象の抑制方法を確立し、MEMS技術と組み合わせて、電気接点を超小型にしたい。 2.アーク放電抑圧のための独自手法の提案 従来の電気接点回路の開離機能を、通電電流を遮断する機能と、電源電圧を隔離する機能を分離する構成である。第1の方式は、通電スイッチに並列に過渡電流スイッチとコンデンサを接続し、通電スイッチの接点開離時に過渡電流をコンデンサに流して、最小アーク放電電流に相当する接点電流値の時に、接点での電圧を最小アーク放電電圧以下に設定する方法である。第2の方式は、通電スイッチ開離時の電流を多数個の抵抗を介して多数個の過渡電流スイッチ分流して、最小アーク放電電流以下の条件で開離する方法である。このような多数個の素子を並置して、精確な機械動作の時間制御を超小形に実現するには、マイクロマシニング技術(MEMS)が適している。 3.本年度の成果 本提案手法に基づき、Si単結晶片持ち梁構造の開閉電気接点に、有限要素法解析や等価回路解析を適用して、アーク放電の抑圧条件を導出した。その結果、MEMS開閉接点の基本的な構成を明らかにできた。その際、これまで電気接点動作では無視されてきたクーロン静電力の影響を、リードスイッチでの代替実験で明らかにした。 既存のMEMS技術を数A程度の大電流回路に適用するためのプロセスの問題については、RIE技術を中心にICP-RIE技術などを適用し、小型で大きな変位を実現できる片持ち梁と、対応する接点電極の試作が可能になった。
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