研究概要 |
LTCC構造多層共振器の基本となるブロードサイド結合インターディジタル複合共振器の基本特性をまず電磁界シミュレータにより検討した.基本特性とは共振周波数(及びスプリアス周波数),無負荷Q,外部Q,結合係数のパラメータ依存性である.加工性,損失特性の点で優れている菱江化学製BTレジン基板を用いて上の結果を実験的にも検証したが,現在結合係数がうまく説明できない状態である.その理由はおそらく基板上下に設けた接地板の接続不完全にあり,銅メッキ技術の向上を図ることによって解決するものと考えている. 又人工誘電体共振器の無負荷Q値を向上させるためには共振器を構成する人工分子の配列の工夫が必要である.そのため誘電率の虚数部を精度良く計算できる摂動法に基づくアルゴリズムを開発したが現状では安定的に動作していない.シミュレータ付属の積分計算カルキュレータ使用法に問題があると思われるのでその習得に努める. 一方通常のディスク誘電体共振器のTEO1δモードに対応するモードを選択的に励振するために,円弧状の金属ストリップを同心円状に並べて人工誘電体共振器を作製した.この構造は等価比誘電率が1000を超えるほど大きくなり共振器の小型化に好都合である.しかし現状ではスプリアス特性が期待したほどよくないためその改善が必要である.また無負荷Q値も数100程度しかないのでその最大化の方策を探さねばならない.現有のメッキ装置により銅メッキ厚さをうまく制御できるようになればその最適化によりQ値を10倍程度向上できる見込みがある. 複数の共振器を相互に結合させることによって帯域通過フィルターが実現される.その帯域を決定するために必要なパラメータである共振器間結合係数を計算する新しい方法を提案した.結合の物理的意味が明確に示される方法であるためフィルター設計に有用であると思われる.
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