自動車走行ITSにおいては外部との情報の伝搬媒体として通常電波が用いられる。この電波の伝送技術を把握する事はITS技術の確立に必須である。電波の伝送技術は電波送信、電波伝搬、電波受信技術から成り立っている。また、電磁波特有の偏波の性質を把握する必要がある。伝送特性は直線偏波か円偏波かという電波の偏波によって大きく異なるにも関わらず、その性質については殆ど知られていない。また、電波伝搬技術において最も特性把握が困難なのはビルの多い市街地である。市街地では自動車事故が多発しており大きな社会問題となっている。 本研究においてはITS用自動車搭載アンテナの自動車搭載時の解析を行った。その結果、従来から知られているアンテナ単体の指向特性、インピーダンスと大きく異なり、かなり複雑な特性を示し、シミュレーション設計の有効性を示した。また、道路を考慮した解析においては低仰角では道路がないと仮定した通常の設計値とは大きく異なる事も示し、道路を考慮した解析が必須であることも示した。更に、自動車の位置測定にはGPS技術が不可欠であるが、市街地ではGPS送信電波がビル壁面で反射およびビル角で回折を起こし、自動車の位置推定に大きな誤差を生む。GPSでは円偏波が用いられているが、円偏波に対するこれらの影響は従来研究されて来なかったが、今回はこの影響についても明らかにした。これらの解析には本研究で開発した高速度高精度の電磁波シミュレーション技術が用いられている。
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