研究課題
本年度の研究は、研究実施計画において主に挙げた以下の3項目について行っている。まず、複合誤り訂正符号が扱える誤りの種類として複合消失についても扱えるように、複合距離の概念を一般化し、限界距離復号に類似する復号を行えることを理論的に明らかにした。この結果は、従来から積み重ねてきた研究結果を丁寧に組み立てることで得られている。この研究成果については、投稿準備段階である。また、一般的な複合誤りの形態を探る研究では、主要な成果までには辿りついていない。この理由に、複合誤りの簡単な一般化を仮定しても、符号理論において必要とするある量を測るには、計算機科学分野で扱われる最小集合被覆問題に関連する困難さを伴うためであると考えている。次に、リスト復号として扱われる限界距離を越える誤り訂正を行う研究に関しては、リード・ソロモン符号に対する高速復号アルゴリズムの理論的構築およびその評価を行った。この復号法はある種の最尤復号を実現可能とする有効な方法と考えられる。現在、この研究成果については、電子情報通信学会誌に投稿中である。最後に、複合誤りを多様な誤りの形態ととらえた場合の応用として、近年、情報理論の分野において扱われているネットワーク符号化問題に関する研究を行った。現段階では、直接、複合誤りの概念を適用できるまでには至っていないが、次のような研究を行っている。一つのサーバから複数のユーザへ同じデータを配信するマルチキャスト通信を仮定した場合、ネットワーク中を流れるデータを陽に得られるようにするロバスト性と陽には得られなくするセキュア性という相反する2種類の性質を兼ね備えた情報理論的な概念を与え、具体的な構成法を与えた。また、セキュアネットワーク符号をセキュアにするリンクの組合せ数の多項式時間計算量で構成可能なアルゴリズムを与えた。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (5件)
電子情報通信学会 技術研究報告 情報理論 IT2005-131
ページ: 211-216
電子情報通信学会 技術研究報告 情報理論 IT2006-41
ページ: 37-42
第29回情報理論とその応用シンポジウム予稿集,函館,Nov.28-Dec.1,2006 II
ページ: 763-766
第29回情報理論とその応用シンポジウム予稿集,函館,Nov.28-Dec.1,2006 I
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Proc. of The 29th Symposium on Information Theory and Its Applications, Hakodate, Nov.28-Dec.1,2006 I
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