研究課題
従来の監視カメラは常に我々を写し続け、受信者に対して被写体の細部までを克明に伝えてしまう。いわば被写体の気持ちを無視した映像通信システムとなっている。これに対し本研究では、映りたくない人は自動的に隠す、いわば見られる人の気持ちを反映するプライバシー・コンシャスなビデオ通信方式を開発し、これをもって国際交流に貢献することを目的としている。1年目は、1)映像中から人物領域を抽出し、2)カメラからの距離に応じて人物ごとの透明度を決め、3)必要最小限の情報のみを圧縮符号化および伝送し、4)受信側で透明人間を映し出す方法を提案した。提案手法はとくに、画像符号化の国際標準であるJPEG2000(JP2K)の要素技術を活用しているため、世界的に普及しているIPコアなどのハードウェア・ソフトウェア資産を活用でき、開発期間の短縮や製品コストの削減が可能となる優れた特徴を有している。2年目は、5)本システムをDSPによりハードウェア実現し、6)諸般の利用形態における改善点を明らかにし、システムの実用化を目指した評価実験を行った。既存の画像認識モジュールと既存の画像符号化モジュールを単に組み合わせるだけでは学術的な特色があるとは言えない。本研究では、7)JP2K画像符号化国際標準の要素技術を活用し、8)認識処理にフィードバックすることで人物領域や透明度を決定する。このような点で学術的に特色があり独創的であると言える。結果として、認識と符号化の協調技術が開発され、小型で省電力な知能ビデオカメラの開発が期待できる。更にはこれを太陽電池と風力発電で駆動することで、プライバシー・コンシャスな環境調和型モニタリング・システムを構築できる、あるいは、人に緊張感を強要しない遠隔共同研究空間を提供できる、等の意義を有する。
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