研究概要 |
1.オンライン署名照合における識別率向上 オンライン署名の特徴信号をウェーヴレット変換によるサブバンド分解により周波数(レベル)毎の信号に分解し,本人と詐称者の違いをより顕著にした後に適応信号処理技術を用いた識別により照合を行う方法において,移動角度や移動加速度,移動ベクトルパラメータを新たに定義し,それらを用いた照合性能の検証を行った.移動角度パラメータによる照合率は約95.8%,移動加速度パラメータでは約94.0%,移動ベクトルパラメータでは約96.0%であった.さらに,それらのパラメータと従来からの署名の座標値パラメータを融合させる方法についても検討を行った.特に,複数のパラメータを融合させる場合,それぞれの閾値の変動がシステム全体の照合率に大きく影響するため,署名の複雑性と閾値設定に因果関係があることを利用し,移動角度パラメータが負の値をとる(ペンの動きが逆行する)標本数や正負に切り替わる回数を用いて署名の複雑性を検出し,それらを用いて閾値を補正する方法を提案した.結果として,照合率99.0%を達成した. 2.音声照合の研究 音声を用いた本人照合技術について新たに研究を開始した.特に,特徴抽出に要する演算量が少ない音声のピッチ情報を用いた照合について検討を行った.具体的には,音声波形の自己相関特性からピッチ情報を抽出し,ピッチが正規分布すると仮定した場合の標準化変量により照合を行った.結果としては,テキスト独立型の場合に照合率は74.3%であった.また,音声照合では周囲雑音が問題となるため,雑音除去に関する研究も行った.特に,周波数領域での適応線スペクトル強調器を用いた手法について改良を重ねた結果,入力SN比が0dBの条件下において,約8dB改善可能であることを見出した.
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