センサーネットワークの普及にとってまず重要なことは、物理層における無線通信回線を安定的に確保することである。各種センサーがランダム粗面と考えられる砂漠、森林、地表などに設置されることを考えると、ランダム粗面に沿う電波伝搬特性の解明が先決事項である。平成17年度の研究計画の主要な事項は、1次元ランダム粗面沿う電波伝搬問題をコンピュータ・シミュレーションによって解析することであり、下記に示すような研究成果が得られており、研究目的はほぼ計画通り達成されたと考えられる。 まず、任意のパワースペクトルを持つランダム粗面を連続的に生成するアルゴリズムを開発した。これは従来の有限区間の生成方法を拡張して、1次元的だけではなく2次元的にも、連続的に限りなくランダム粗面を生成する方法を開発したものである。この結果は電気学会電磁界理論研究会で公表した。次に、ランダム粗面に沿う電波伝搬問題を数値的に解くために、二通りの解析方法について考察した。その一つは波動方程式を時間・空間的に離散化する狭領域に対して有効なFVTD法であり、他は高周波領域の電磁波を光学的に近似する広領域に対して有効なレイ・トレース法である。パワースペクトルがガウス分布のランダム粗面に対して、これら両手法を適用した数値解析を行なった。その結果、両手法とも1次元ランダム粗面に対して有効な計算方法であることが判明した。これらの研究結果は、電気学会電磁界理論研究会と電子情報通信学会アンテナ・伝搬研究会で公表した。さらに、FVTD法の適用に当たってのコンピュータ計算容量の低減化を図るため、外挿法に基づく吸収条件を開発することができた。この結果は国際会議ISAP2005で公表した。
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