研究概要 |
平成17年度は地域性と機器特性に着目した研究を行い,個別建物・機器の特性を地域の詳細なエネルギー需要の推計と合わせ機器導入によるCO2排出削減評価を行なったが,平成18年度は,この方法をさらに気候特性の異なる日本の3都市17区に対して適用を行った.その結果,空調・給湯機器を全電化するケースHPと全オプションの導入を認めるケースFULLの場合,これら17地域を通じCO2排出量削減ポテンシャルと業務用ビル床面積の比率との間に統計的に有意な関係を見出すことができた.そこで,この関係を全国950市区に適用することで日本全体の都市部におけるCO2排出削減ポテンシャルの推計を行なった.結果として,日本の各市町村のCO2排出削減ポテンシャルは人口密度,経済活動に基づく業務用ビルの全建物床面積に対する比率のばらつきから大きく変化するものの,日本全体ではおよそ18.6%の排出削減ポテンシャルのあることが分かった. また、平成18年度は,これまでに行ったマルチエージェントベースのエネルギー需給システムと地域別需要家の用途別エネルギー需要とエネルギー機器の稼働特性を反映したモデル化をさらに進め,CO_2出権取引市場の影響についてマルチエージェントシミュレーションを行った.CO_2排出量削減のための施策として排出権取引制度を取り上げ,排出権取引市場と電力市場の2つの市場が存在するモデルをQ-Learningを備えたマルチエージェントによるシミュレーションによって解析した.ここでは,その市場モデルの中で自らの利益を求めつつも保持している排出権量内に排出量が収まるように行動するエージェントを考え,排出権取引市場が電力市場やエージェントの利益に与える影響などについて解析を試みた.その結果,エージェントは自らが保持する排出権量内に排出量をおさめるように行動価値関数を修正し,収束することができた.また,排出権取引制度がエージェントの利益に与える影響として水力発電事業者と火力発電事業者の利益の差が電力市場のみの場合と比べて縮まったことを確認し,電力市場と排出権取引市場の関係も見ることができた.
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