研究概要 |
地球環境の保全は人類の将来にとって非常に重要な課題である。その中で人工衛星や航空機による地球観測は大局的なリモートセンシング技術であり,重要な役割を担っている。2006年1月12日に偏波合成開口レーダ(POLSAR)を搭載した日本の人工衛星ALOSが打ち上げられた。この衛星は世界最初のPOLSARで観測技術として偏波を使った合成開口レーダに寄せられる期待は非常に大きい。取得されるデータは偏波レーダによって観測される散乱行列である。この研究は散乱行列を使って偏波レーダ画像の判読方法を開発することにある。 今年度は,偏波レーダ画像判読の基本となる散乱行列の2次統計量,集合平均の独立情報量,その性質について理論的に詳しく検討した。具体的には集合平均Covariance行列, Coherency行列について,固有値,回転不変量などを求め,それらを比較して最低4つの偏波情報が基本をなしていることを見いだした。そして,4つの独立偏波情報をもとに散乱電力の分解を試み,表面散乱,2回反射散乱,体積散乱,Helix散乱にモデル分解した.この結果は従来の3成分モデル電力分解をさらに発展させて4成分分解が可能となることを示したものである。 散乱行列からCovariance行列とCoherency行列を作成し,モデル行列と比較展開することにより4成分散乱電力の分解法を確立し,新潟市や新潟大学近郊の偏波画像データ(L-band, X-band)を例にとって解析した。さらにCovariance行列やCoherency行列の行列形式は異なっても同じ分解結果が得られることを確認した。つまり,普遍性のある解析結果を得ることができた。 この成果は論文として,また国際会議にて発表した。また,来年度の国際会議にも投稿中である。
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