研究概要 |
(1)MEG順計算法:脳神経電気活動を等価電流ダイポールで表現した際の脳磁計測値(コイル鎖交磁束数)の順計算法を整備した。「等価電流ダイポール→境界上ポテンシャル→磁束数」の順に計算する方法(方法1)と、「交流コイル電流→誘導電界→Eatonの相反定理→磁束数」の順に計算する方法(方法2)とが選択できる。7球頭部モデルの極変換付き等価多重極モーメント法解析を実施し、両手法の計算値が倍精度限界程度で一致することを示した。ダイポール配置点数をV、コイル数をMとして3VM個の値を得るには、方法1と2で各々3V回、M回の計算を要し、方法2の優位性が確認された。 (2)ボクセルデータ用高速多重極表面電荷法の精度評価:(1)より「交流コイル電流→誘導電界」の計算を行えばMEG順計算が可能であり、この計算精度をボクセルデータ用高速多重極表面電荷法について検証した。7球頭部モデルに対して極変換付き等価多重極モーメント法解析とボクセルデータ用高速多重極表面電荷法解析とを行い、灰白質領域での後者の電界精度を評価した。結果、ボクセルサイズが1mm、0.5mm、0.34mmの各ケースで、電界誤差ベクトルの標準偏差は1.4%、0.98%、0.81%(灰白質内最大電界で規格)となった。なお、ボクセルサイズが0.34mmのケースで、全ボクセル数、表面電荷要素数、計算時間はそれぞれ106,575,801、4,936,874、59分39秒となった。人体詳細ボクセルモデル解析時の計算精度は直接検証不能だが、概算で7球モデルのケースに近いと考えられる。また、日本人成人男性全身ボクセルモデル(2mmボクセル)の電界計算時間を100分にまで短縮した。 (3)fMRI・MEG統合解析法:サーバスの式を用いたfMRI・MEG統合解析法について、報告者らは従来、最小二乗法を変則的に使用する逆計算手法を用いていたが、今回はアダプティブビームフォーマを用いて同様の解析を行った。両手法による解析結果には一長一短があることが分かったが、同時に、線形制約付きアダプティブビームフォーマとして定式化した後にノンアダプティブ化した式が、従来使用していた方法と同一の式となることが判明し、従来法の理論的位置付けが明確になった。
|