超高感度センサにより微小信号をシールドなしで計測するためには、測定対象以外からの、いわゆる環境雑音と呼ばれる雑音への対策が必須である。本研究課題は寸動的雑音制御(ANC)によりセンサに入力する環境雑音を低減することを目的としている。対象となる周波数域として、数百Hz以下とMHz帯の2つ帯域についてそれぞれ検討した。 低周波領域では、超伝導量子干渉素子(SQUID)マグネットメータをセンサとして用い、負帰還ループ構成による雑音強度低減を図った。ただし、全ての磁場を打ち消すと測定信号まで消失してしまうため、非破壊検査を想定し、数百Hzの特定周波数信号のみを検出することとした。周波数選択にLPFを使用し、低周波域のみをANCにより押さえこむことで、従来振動による磁場揺らぎのため困難であったロボットアームによるSQUID移動測定を実現した。ただし、LPF特性を最適に選ばなければ、発振が生じたり、有効に雑音磁場を抑制できなかったり、あるいは信号磁場まで低減・させることが明らかとなった。 MHz帯の環境雑音としては、AMラジオ放送が引き起こすラジオ周波数干渉(RFI)があり、この抑制が微小信号検出において重要である。平成17年度は、良好な制御のため特に位相制御に重点を置いたアナログ回路を作製し、実験室レベルで-40dB以上、実際のAMラジオ波においても、-35dB以上の雑音の低減を実現した。しかしながら、その調整はマニュアルプリセットによるもので、雑音源の変動に対して自動追従ができない。平成18年度は、Field Programmable Gate Array(FPGA)を使用したANCのディジタル信号処理化の可否検討を行った。模擬実験により、受信アンテナのみ入力した測定信号をほとんど減衰させることなく、雑音源アンテナから放射された1MHz擬似雑音を約40dB程度抑制することができた。
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