研究概要 |
鉄鋼構造物の材料の微視的な構造変化を磁気的性質から検出する新しいモニタリング手法の適用可能性について以下の手順により検討を行った。 1.磁気ヨークとバイポーラ電源、フィルタより構成された非破壊検査テストベッドを用いて、鉄鋼材料の結晶異方性と磁気特性の相関関係を調べる。 2.マクスウエルの電磁方程式から,非破壊検査のシミュレータを構築する。 3.材料劣化モニタリングのための計算技法を確立する。 その結果以下の研究成果を得た。 4.鉄鋼の加工工程である冷間圧延によって材料内部の転位密度が増加する事に着目し,開発した検査システムにより冷間圧延各工程における鉄鋼材料のマイナーループ計測を行った。その結果、材料の各工程におけるマイナーループ特性には明確な差異が認められ、磁気を用いた材料の経年劣化非破壊評価手法が適用可能であることを確認した。 5・マイナーループ磁気特性を入力とし、材料のスキャニング走査による漏れ磁束を検出する非破壊検査の機構をシミュレータにより構築した。その結果、材料評価パラメータを与えたときの観測磁場を模擬することが可能となり、材料の経年劣化評価のための検査方式の最適化を行う手順を確立することが可能となった。 6.開発した非破壊検査テストベッドと非破壊検査シミュレータとを融合することにより、磁気計測から得られたデータとシミュレーションによって得られたデータを比較することで、材料劣化パラメータを推定する計算アルゴリズムを構築し、各種実験から有効性を検証した。 以上・従来は困難であった「その場計測による磁気特性評価」が本研究により実現できたことから、提案手法により実システムにおける材料劣化モニタリング技術への適用可能性が明らかとなった。
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