本研究代表者はこれまでの研究において、Renyiのαエントロピーから導かれる定常確率過程の等価帯域幅を提案し、従来から提案されている帯域幅のうち、重要な4つの帯域幅を統一的に表現できる広いクラスであることも示している。これらの成果を背景に、本研究は、 1.Renyiのα次拡張ダイバージェンスを用いた統一的な新しい等価帯域幅のクラスの提案とその理論構築 2.統計学におけるCopulasと正値時間-周波数分布表現の関連性の解明と正値分布推定法の確立、 3.等価帯域幅を用いた正値時間-周波数表現における局所帯域幅の時間変化追跡法の提案、 4.提案する解析法を心音などの実際の生体信号解析へ応用し、新たな知見を得ること、 などを主たる目的としている。 本年度の成果は以下の通りである。 1.Renyiのα次拡張ダイバージェンスを用いることによって、音声処理分野でスペクトルの広がりを表現するときによく使われるSpectral Flatness Measureを包含するような等価帯域幅の表現を得ることに成功した。 2.新しく提案した等価帯域幅と従来から提案している等価帯域幅との比較を行った。 3.次に、統計学におけるCopulas理論を援用して非定常確率過程の正値の時間-周波数分布を推定する方法を検討した。このとき、周辺分布を如何に推定するかが大きな問題となるが、詳細な検討は次年度以降に行うこととし、今回は周期的な非定常確率過程に限定した推定方法を得た。更にこのCopulaによる正値時間-周波数分布を用いて、非定常確率過程に対する等価帯域幅の拡張を行った。 4.そして、計算機によるシミュレーションによって、いくつかの典型的な確率過程(2次の事変係数自己回帰過程>に対する、提案手法の妥当性を検討した。また、脳波計測実験や心拍変動信号への応用に関する研究もスタートさせた。
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