研究概要 |
本年度は非定常信号の等価帯域幅に関する理論構築と生体信号への応用を主たるテーマとした研究計画に基づき以下の点について研究を実施した。 1.Copulas理論を援用して非定常確率過程の正値の時間-周波数分布を推定する際、周辺分布を如何に推定するかが大きな問題となる。 1.1時間周辺分布の推定 AM型の確率過程において、Wigner-Ville分布を用いた時間周辺分布(確率過程の包絡線の2乗)の推定法を提案した。提案手法と従来法(2乗検波法とコンプレックス検波法)の推定精度を理論的に検討し、推定のバラつきが抑えられることを示した。またシミュレーションによって理論の裏付けを行った。 1.2周波数分布の推定 確率過程における周波数周辺分布の推定問題は、パワースペクトル推定問題に他ならない。ノンパラメトリックなパワースペクトル推定法として不等間隔ペリオドグラム平滑化法に関する研究をしており、本研究課題研究期間内にその成果を公表できる見込みである。 2.Renyiエントロピーから得られるRange尺度とPeak尺度を用いて、2つの確率変数X,Yの独立性を評価できることを示し、独立成分分析への応用を試みた。Range尺度は推定精度の面で安定しないが、Peak尺度はシャノンエントロピー尺度と同等の独立性の検出精度を持ち、かつ計算速度が速いということをシミュレーションによって示した。 3.提案する非定常性解析法を実際の生体信号である脳波に適用した。眠気に逆らって覚醒維持を続けるといった状態の脳波解析はあまりなく、こうした脳波の生理学的知見を得ることは、仕事の効率を定量的に検討する場合に大変有用であると考えられる。特にドライバーの疲労度や昼食後の昼寝の効果など安全や環境などの分野における定量評価の方法として期待できる。現在、計測した脳波を開発中の手法を用いて解析を順次進めている。
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