研究概要 |
「音を聴くと,色が見える」という現象は「色聴(colored hearing)」と呼ばれており,心理学の分野で共感覚(synesthesia)の1つ,すなわち1つの感覚が本来独立であるはずの別の感覚を喚起する非常に興味深い現象として知られている.本研究では,色聴現象を客観的に計測するとともに,色聴のない一般人に対しても色聴を利用して調和の取れた映像音楽コンテンツを提供することを目的に,以下の課題を実施した. 1.fMRIによる色聴現象の計測 色聴保持者において音楽視聴時に実際に色知覚に関与している脳内領野で活動が生じているかをfMRIを用いて計測した.実験はブロックデザインで行われ,目を閉じた色聴保持者に対して音楽,音階等の呈示が行われた.色知覚に関わるV4/V8のROI分析の結果,色聴保持者のみ音楽及び音階の呈示時に有意な活動がみられた.このことは,色聴が聴覚系と視覚系の直接的な相互作用により生じていることを示唆している. 2.メディアコンテンツにおける映像と音楽の関係の解析 音楽と映像を用いたメディアコンテンツにおいて,映像のイメージに合う音楽であるとか,逆に音楽に合う映像によって互いの印象が強調されているといったイメージの相互作用が,どのような音楽と映像の要素から生じているのかを,映像音響メディアの典型であるテレビCMを題材にして解析を行った.解析結果では,映像と音楽が主に(I)「激しい-落ち着いた」と(II)「日常的-高級感」の軸に則った規則性を持ち,また特に色のカテゴリに関して(II)軸に「鮮やかな-モノトーン」が布置するなどの傾向を得た。さらに自動車メーカは高級感を指向した表現形態を採るというように,CMと広告主のイメージとが深く関わっていることも定量的に示された.これらの分析結果はマルチメディア作品の創作支援システムや評価ツールへ応用展開することが考えられる.
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