本研究では、モデル誤差のゲインばかりでなく位相情報を利用し、ロバスと制御を下記のように発展させた. (1)モデル誤差の位相情報を加味した新しいロバスト安定理論を構築した.これによってスモールゲイン定理による保守性をブレークスルーすることができた. (2)モデル誤差の位相情報を、ステップ応答の遅れから測定する方法を確立した.これによって応答の遅い系のモデル誤差も容易に見積もることができるようになった. (3)モデル誤差の位相情報を安定性、制御性能の改善に利用する方法を提案した.これによって従来のH^<∞>制御よりも制御性能の良い設計が可能になった. (4)目標追従特性、外乱抑制特性、ロバスト安定性を個々に独立して設計し、それらをまとめて一つの制御器にする多自由度制御系の設計法を構築した. (5)上記の結果を多変数系に応用し、ロバスト制御理論と多自由度制御系設計法を構築した. (6)上記の方法を、むだ時間系に応用し、むだ時間の大きな変動に対してもロバスト安定な制御系が得られるようにした. (7)上記の結果を、モデル誤差のゲインと位相を利用した誤差補償多自由度制御系-モデルブリッジ制御-として体系化した. これらの結果、従来なかったモデル誤差の位相を取り入れた新しいロバスト安定理論体系を構築し、従来なかったより高いロバスト安定性も独立して設定できる多自由度制御系設計を可能にした.
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