研究概要 |
飛行船は安全性が高く,空中静止が可能などのユニークな特徴をもつ.近年,その特徴を生かした様々なプロジェクトなどが進められており,飛行船を希望の位置にすばやく移動させ,静止させる自動制御技術が不可欠とされている.本研究の目的は,実用的な飛行船の自動航行制御システムを開発し,小型の無人飛行船を用いた実験により,有効性を実証することである. 本年度は,上記研究課題の初年度であるため,理論研究を中心に行い,以下のような実用的な飛行船の自律航行制御系の設計法を開発した. 1.風外乱を抑制する飛行船制御システムの設計:実用上の問題点として,風外乱による定点滞空性能の劣化や不安定化などが指摘されている.飛行船に一定であるが未知の大きさの持続的な風が外乱として加わる場合について考え,このような風外乱を受けても,任意の希望の地点にすばやくかつスムーズに移動し静止できるコントローラの設計法を導出した.有効性をシミュレーションにより検証した. 2.ロバスト安定性を保証する飛行船制御システムの設計:実用上の問題点として,速度・角速度センサーのノイズによる制御性能の劣化や空力係数なども含めた制御対象のパラメータ誤差による制御系の不安定化などが指摘されている.本研究では,飛行船の物理パラメータ(粘性係数など)に不確かさや時間変動があり,その範囲のみが既知である場合について考え,そのような変動や不確かさが存在しても,制御システムの大域的指数安定性を保証できるロバスト安定化コントローラの設計法を導出した.有効性をシミュレーションにより検証した. 3.飛行船の実験システムの改良と特性解析:風外乱を抑制するため,飛行船の大きさや形状などを工夫し,実験システムの改良を行った.このシステムを用いて,飛行船のシステム同定実験を行い,動的特性を解析し,飛行船の物理パラメータのデータを蓄積した.
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